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相続税の基礎

相続税が払えないときは「申告だけ先に出す」が正解な理由【2026】

著者:相続税ナビ 編集部
相続税払えない延納物納取得費加算の特例

遺産のほとんどが実家の土地や建物で、現金はほとんどない。それなのに相続税は「原則、現金で一括払い」と聞いて、頭が真っ白になっていませんか。

「払えないなら、申告もしようがない」と考えて手が止まってしまう人は少なくありません。しかし、実はこれが一番損をする選択です。払えるかどうかと、申告を出すかどうかは、別の問題だからです。

この記事では、相続税が払えないときに最初にやるべきこと、放置したらどうなるか、そして売却・延納・物納・借入の4つの選択肢の選び方を、国税庁の情報をもとに解説します。

結論|払えなくても申告は期限内に出す。払い方はそのあと選べる

相続税の申告期限と納付期限は、どちらも「亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」です。(出典:国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」)

⚠️お金が用意できていなくても、申告書だけは期限内に出してください⚠️

理由は3つあります。

  • 延納・物納の申請期限が「納期限」だから:期限内申告なら、申告期限までに申請書を出す必要があります
  • 申告しないと特例が使えないから:小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減は、申告して初めて使えます
  • 無申告だと加算税が上乗せされるから:納税が遅れる延滞税に加えて、無申告加算税もかかります

(出典:国税庁「No.4211 相続税の延納」)

延納の要件には、延納申請書を「納期限まで」に出すことが含まれています。期限内に申告した場合は、申告期限が延納申請期限になります。つまり、申告を後回しにした時点で、分割払いという選択肢を自分で狭めてしまうことになります。

実際の口コミ実際の口コミ

「遺産相続で7000万、受けとることになってますが、相続税、3000万払わないといけませんが、3000万を払えない場合はどうなりますか」 (出典:Yahoo!知恵袋、2025年2月7日投稿/質問ページ)

この質問者のように、「払えない」という不安が先に立つと、手続きが止まりがちです。まずやるべきことは、正しい税額を確かめることです。遺産7,000万円を子1人で相続した場合、特例を使わなくても相続税は約480万円で、3,000万円にはなりません。税額の目安は「相続税はいくらから?」で解説しています。

山田くん山田くん

お金が用意できないのに申告書だけ出すなんて、かえって「払えない人」として目をつけられそうで怖いんですけど…。

司法書士の先生司法書士の先生

その心配は不要です。延納や物納は、法律で認められた正式な納め方です。税務署が怖いのは「申告して払えない人」ではなく、「申告しないまま期限を過ぎる人」です。期限内に申告し、延納などを申請すれば、ペナルティを最小限に抑えられます。

払えないまま放置するとどうなる?延滞税から差し押さえまで

納付期限を過ぎると、まず延滞税が日割りでかかり始めます。令和8年中の延滞税の割合は、納期限の翌日から2ヶ月以内が年2.8%、2ヶ月を過ぎると年9.1%です。(出典:国税庁「No.9205 延滞税について」)

たとえば相続税1,000万円を3ヶ月遅れて納めると、延滞税はおよそ12万円になります(最初の2ヶ月が年2.8%で約4.7万円、残り1ヶ月が年9.1%で約7.7万円)。2ヶ月を過ぎると割合が3倍以上になるため、遅れるほど負担が急に重くなります。

それでも納めないと、督促状が届きます。督促状が送付されてもなお納付しないときは、財産の差押えなどの滞納処分を受ける場合があります。(出典:国税庁「No.9206 国税を期限内に納付できないとき」)

時期 起きること
納期限の翌日〜2ヶ月 延滞税(令和8年は年2.8%)が日割りでかかる
2ヶ月を過ぎたあと 延滞税の割合が年9.1%に上がる
督促状が届いたあと 納めないと財産の差押えなどの滞納処分を受ける場合がある

(出典:国税庁「No.9205 延滞税について」、国税庁「No.9206 国税を期限内に納付できないとき」)

さらに相続税には、連帯納付義務があります。相続人の1人が払わない場合、ほかの相続人も、自分が受け取った財産の範囲で代わりに払う責任を負います。(出典:e-Gov法令検索「相続税法」第34条)「自分の分は払ったから関係ない」とは言えない点に注意が必要です。

山田くん山田くん

兄弟の誰かが払えなかったら、自分のところに請求が来ることもあるんですか?

司法書士の先生司法書士の先生

はい、あります。相続税の連帯納付義務は、相続人の1人が納めない場合に、他の相続人が受け取った財産の価額を限度として代わりに納める仕組みです。兄弟の1人が払えそうにないときは、本人任せにせず、相続人全員で納税方法を話し合っておくべきです。

まず確認したい「今すぐ使えるお金」

延納や物納を考える前に、手元に用意できるお金を確認しましょう。見落としやすいのが次の2つです。

  • 遺産分割前の預貯金の払戻し:亡くなった方の口座から、他の相続人の同意なしで一定額を引き出せる
  • 死亡保険金:受取人が請求すれば、遺産分割を待たずに受け取れる

預貯金の払戻し制度では、各相続人が単独で引き出せる額は「相続開始時の預金額×3分の1×その相続人の法定相続分」です。ただし、同じ金融機関からは150万円が上限です。(出典:法務省「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)」)

たとえば、父の口座に1,800万円あり、相続人が子2人なら、1人あたり1,800万円×3分の1×2分の1=300万円です。ただし上限があるため、その銀行から引き出せるのは150万円までになります。複数の銀行に口座があれば、銀行ごとに上限の範囲で引き出せます。

山田くん山田くん

親の口座は亡くなったら凍結されると聞きました。遺産分割が終わるまで、1円も下ろせないんじゃないんですか?

司法書士の先生司法書士の先生

いいえ、下ろせます。2019年7月から、遺産分割前でも各相続人が一定額までを単独で払い戻せる制度が始まっています。相続税の全額には足りなくても、当面の資金や税理士費用にあてることができます。手続きは金融機関ごとに異なるため、事前に必要書類を確認しておく必要があります。

4つの選択肢を比較|売却・延納・物納・借入

手元のお金で足りない場合の選択肢は、大きく4つです。

選択肢 条件 期間 追加でかかるもの 向いている人
売却して払う 相続人全員で売却に合意できる 売却までの数ヶ月 譲渡所得税(特例で軽くできる) 住む予定のない不動産がある
延納(分割払い) 税額10万円超・現金一括が困難・原則として担保 原則5年、不動産等の割合に応じて最長20年 利子税 毎年の収入で少しずつ払える
物納(財産で納める) 延納でも払えない部分に限る 審査に数ヶ月 書類の整備費用(測量など) 売れにくい不動産しかない
借入 金融機関の審査 契約による ローン金利 不動産を手放したくない

(出典:国税庁「No.4211 相続税の延納」、国税庁「No.4214 相続税の物納」)

延納は「10万円超・担保・利子税」がセット

延納は、相続税額が10万円を超え、金銭で一括納付することが困難な場合に、担保を提供して年払いで納める制度です。延納税額が100万円以下で、延納期間が3年以下なら担保は不要です。(出典:国税庁「No.4211 相続税の延納」)

延納期間と利子税は、遺産に占める不動産等の割合で変わります。

遺産に占める不動産等の割合 不動産等に係る部分の延納期間(最高) 特例割合(令和8年)
75%以上 20年 年0.6%
50%以上75%未満 15年 年0.6%
50%未満(一般の延納) 5年 年1.0%

(出典:国税庁「No.4211 相続税の延納」)

特例割合は、令和8年1月1日時点の延納特例基準割合1.3%で計算された値で、毎年変わります。延滞税の年9.1%と比べると、延納の利子税ははるかに低い水準です。

物納は「延納でも無理な部分」だけ

物納は、延納によっても金銭で納めることが困難な場合に、その困難な金額を限度として相続財産で納める制度です。つまり、延納 → 物納の順番で検討することが前提です。(出典:国税庁「No.4214 相続税の物納」)

物納できる財産には順位があり、第1順位は不動産・国債・上場株式などです。境界が明らかでない土地や、抵当権がついている不動産、共有の不動産などは、物納に適さない財産として認められません。(出典:国税庁「No.4214 相続税の物納」)「売れない土地を国に引き取ってもらえばいい」と考えがちですが、測量や境界確定など、物納できる状態に整えるまでに時間と費用がかかります。

山田くん山田くん

売れない田舎の土地を、相続税の代わりに国に渡せばいいと思っていたんですが、それではだめなんですか?

司法書士の先生司法書士の先生

物納は「延納でも払えない部分」にしか使えないため、最初から物納を選ぶことはできません。また、境界が確定していない土地や、道路に2メートル以上接していない土地などは、物納に適さないか、ほかに適当な財産がない場合に限られます。売れにくい土地ほど、物納のハードルも高いのが実情です。

「売って払う」なら取得費加算の特例で税金が戻る

不動産を売って相続税を払う場合、売却益に所得税・住民税がかかります。ここで使えるのが、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(取得費加算の特例)です。

相続した財産を、相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売った場合、払った相続税のうち一定額を、売った財産の取得費に加えることができます。(出典:国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」)取得費が増えれば、そのぶん売却益が減り、税金も少なくなります。

モデルケース:子1人が遺産1億円を相続し、土地を売って払う

項目 金額
遺産の課税価格 1億円(うち土地の相続税評価額6,000万円)
相続税額 1,220万円
取得費に加算できる相続税 732万円(1,220万円×6,000万円÷1億円)
土地の売却価格 7,000万円
所得税・住民税の軽減額(目安) 約150万円

相続税額は、基礎控除3,600万円を引いた6,400万円に税率30%をかけ、控除額700万円を引いて計算しています。(出典:国税庁「No.4155 相続税の税率」)

親が昔買った土地で取得費が分からない場合は、売却価格の5%を取得費にできます。(出典:国税庁「No.3258 取得費が分からないとき」)所有期間が5年を超える土地の売却益には、所得税15%・住民税5%がかかります。(出典:国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」)このケースでは、732万円分の売却益が減るため、復興特別所得税を含めて約150万円の税金が軽くなります。

この特例を使うには、売った年の翌年に確定申告をする必要があります。期限は「申告期限から3年以内」なので、売るかどうか迷っている場合も、この期限を意識しておきましょう。

山田くん山田くん

相続した土地をすぐ売ると、税務署に「相続税逃れ」と疑われたりしませんか?

司法書士の先生司法書士の先生

疑われません。相続した不動産を売って相続税を納めるのは、ごく一般的な方法です。むしろ取得費加算の特例は、相続税を払うために財産を売る人の負担を軽くする目的で設けられた制度です。ただし特例は確定申告をしないと使えないため、売った翌年の申告を忘れないことが重要です。

延納・物納の申請は納期限まで!逆算スケジュール

延納も物納も、申請書の提出期限は納期限です。期限内申告なら、亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に、申告書と申請書を出す必要があります。(出典:国税庁「No.4211 相続税の延納」、国税庁「No.4214 相続税の物納」)

担保や物納の書類が間に合わない場合は、届出書を出せば提出期限を延ばせます。延納の担保提供関係書類は1回につき3ヶ月、最長6ヶ月まで、物納手続関係書類は最長1年まで延長できます。ただし、申請書そのものは納期限までに出さなければなりません。

時期(死亡日から) やること
〜3ヶ月 財産と借金をリストアップし、相続税がかかりそうか概算する
4〜6ヶ月 税理士に正確な税額を出してもらい、払えない額を確認する
7〜8ヶ月 売却・延納・物納・借入のどれにするか決める。売却なら買主探しを始める
9ヶ月 延納・物納の申請書と担保・物納財産の書類を準備する
10ヶ月 申告書と延納・物納の申請書を提出する

払えないかもしれないと分かるのは、税額が確定する申告直前になってからでは遅すぎます。早い段階で概算を出しておくことが、選択肢を残す一番の方法です。

実際の口コミ実際の口コミ

「病気で先が長くないこと、言ってなかったが土地や建物などを含めて遺産が7億くらいあることを言われました。(中略)7億だと一体いくら払うことになりますか?私の貯金は100万円あるかないかくらいでとても払えないと思い混乱しています。」

ベストアンサー:「基本受け取った遺産の範囲での相続税なので困ることはない。ただし、遺産のほとんどが不動産となるとそうはいかない。現金がないから払えないとなる。」 (出典:Yahoo!知恵袋、2024年5月6日投稿/質問ページ)

この質問者は、相続が始まる前に遺産の規模を知ることができました。相続税は受け取った遺産から払うのが基本ですが、回答にあるとおり、遺産の大半が不動産だと現金が足りなくなります。生前に分かっていれば、納税資金の準備や生前贈与など、打てる手は増えます。生前贈与の注意点は「生前贈与の7年ルール」で解説しています。

山田くん山田くん

親が元気なうちから相続税の払い方を考えるなんて、縁起でもない気がして言い出せないんですが…。

司法書士の先生司法書士の先生

気持ちは分かりますが、払い方を決めておくことは、親の財産を守ることでもあります。不動産が多い家ほど、亡くなってから10ヶ月で現金を用意するのは難しくなります。「家を残すために何が必要か」という話から始めると、親御さんとも話しやすくなります。

払えないかもと思ったら、税理士に早めに相談すべき理由

延納や物納は、申請すれば必ず認められるわけではありません。税務署は延納申請期限から原則3ヶ月以内に許可または却下を判断し、担保の状況などによっては最長6ヶ月まで延びます。(出典:国税庁「No.4211 相続税の延納」)書類に不備があれば、その分だけ時間がかかります。

税理士に相談すべきケース 理由
遺産の半分以上が不動産 延納期間や物納の可否が、不動産の割合で変わる
売るか残すかで相続人の意見が分かれている 売却には全員の合意が必要で、時間がかかる
物納を考えている土地がある 境界確定や測量など、事前の準備が必要
申告期限まで3ヶ月を切っている 延納・物納の書類準備が間に合わないおそれがある

自分で申告するか税理士に頼むかの判断基準は「相続税申告は自分でできる?」、期限のスケジュールは「相続税の申告期限は10ヶ月」で詳しく解説しています。

山田くん山田くん

税理士に頼むお金もないから払えないと言っているのに、相談なんてできるんですか?

司法書士の先生司法書士の先生

できます。初回相談を無料にしている事務所は多く、税理士費用は遺産分割前の預貯金払戻しでまかなうこともできます。延納の利子税や延滞税の差、取得費加算の特例による軽減額を考えれば、早めに相談したほうが手元に残るお金は多くなるのが一般的です。

よくある質問

相続放棄をすれば、相続税を払わなくていいですか?

相続放棄をすれば相続人ではなくなるため、相続税も払う必要はありません。ただし、預貯金や実家を含むすべての財産を受け取れなくなります。また、相続放棄は原則として相続の開始を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きする必要があり、相続税の10ヶ月とは期限が異なります。(出典:裁判所「相続の放棄の申述」)

延納の途中で払えなくなったらどうなりますか?

延納の許可を受けたあとで払えなくなった場合は、申告期限から10年以内に限り、まだ支払期限が来ていない部分を物納に変更できます。これを特定物納といいます。(出典:国税庁「No.4211 相続税の延納」)

納税の猶予は使えますか?

国税を一度に納めることが困難な場合には、申請により換価の猶予や納税の猶予が認められる場合があります。猶予が認められると、差押えや財産の売却が猶予され、猶予期間中の延滞税も免除または軽減されます。(出典:国税庁「No.9206 国税を期限内に納付できないとき」)


本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的アドバイスではありません。具体的なご相談は専門家にお問い合わせください。

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